帰ってきた黄色いボール

公園に遊びに行くとき、いつも持って行っていたぽこの黄色いボールがありました。
今日はそのボールのお話です。


今年の3月のこと。久しぶりにいいお天気になったので、ボールを持って公園へ。
片足で立ち、片足でボールを蹴る!
こんなこともできるようになったのが嬉しい、2歳のサッカー大好きなAくんです。
ところが「もう1回っ」と思いきり蹴ってみたボールがお友だちの頭の上をポーンと飛び、すぐ脇の柵を乗り越えて、5mほど下を流れる日野川に落ちていってしまいました。
見ていた先生たちは「あっ!」 Aくんも「あー・・・」
「あんなに下じゃ取りにいけないよ・・・」
たった今まで遊んでいた黄色いボールが手の届かないところに行ってしまって、Aくんはとても悲しくなってしまいました。
先生に「わざとじゃないよね、シュートが大きく飛んだんだね」と言ってもらったのだけれど、
黄色いボールをそのままにして保育園へ帰るのは、なんとなくさみしい気がしたAくんでした。
次の日も、その次の日も、黄色いボールあるかな、と川をのぞきこむ子どもたち。
けれども、あれきり、黄色いボールの姿を見ることはありませんでした。
失った日の日誌には、「黄色いボール 1個 紛失」 との記録がありました。
あれから4ヶ月の月日が流れ、
Aくんは、2歳児のかもめぐみへ進級していました。
黄色いボールのことも、みんなの記憶から遠ざかっていたそんなある日のこと、保育園に一本の電話が入りました。
「そちらの園の電話番号が入った黄色いゴムボールを、川の整備中に見つけまして、事務所で保管しています。」
あの時川に落ちたあのボールを、港湾局の職員の、土井さん、石原さん、西山さんが中村川で水上パロトール中に見つけ、拾って下さったとの連絡でした。
なんと4ヶ月もの間、港南区、南区、中区とゆっくり流れ、もう少しで海に出るところで発見されたそうです。
知らせを受けて、すっかり諦めたボールが見つかり、びっくりするやら、感激するやらの先生たち。
しかも、次の朝、港湾局の鈴木さんが黄色いボールを保育園に届けて下さったのです。
「子どもたちにぜひ会って行って下さい!!」
鈴木さんにお願いして、居合わせたかもめぐみの子どもたち4人と先生とで写真を撮らせてもらいました。
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Aくんは・・・残念ながらこの日はお休み。
Aくんが登園してきたら、真っ先に「あの時のボール、帰ってきたよ」と、教えなくては・・・。
そして、今日。
Aくんも元気に登園したかもめぐみのみんなに、先生が黄色いボールのお話をしました。
「Aくんが、シュートッ!!って蹴ったら、ポーーーーン!って飛んでっちゃって、ばしゃん!川に入っちゃったんだよね」
「そしたら園長先生は、しょうがないねってやさしく言ってくれたんだよね」
「そしてボールは川を流れて、鳥につつかれたり、魚とぶつかったりして・・・中村川まで行っちゃった!」
「それでね、港湾局の土井さんと、石原さんと、西山さんが川をパトロールしていたら・・・ボールを見つけて、拾ってくれて、保育園にお電話をかけてくれたんだよ」
「そして!昨日、港湾局の鈴木さんがこのボールを持ってきてくれたの!」
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Aくんは、先生の話をうん、うん、と聞いていました。
あのときのこと、黄色いボールが高くあがっていったときのこと・・・川にぷかりと浮かんだボール・・・柵につかまってそのボールを見つめたこと・・・そんなことを思い出していたのかもしれません。
そして、先生はAくんを呼びました。
「Aくん、あのときとっても心配したんだよね。ボール、帰ってきてよかったね。また、このボールを持って公園へ行こうね」
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Aくんは、先生の顔をじっと見て、しばらくボールをしっかり持っていました。
そして、「うん」とうなずいて、にこっと微笑んで、先生にボールを返しました。
ぽこの黄色いボールは、外遊びに持っていくボールの袋に、また入ることになりました。
港湾局のみなさんの優しさにのって、ぽこの黄色いボールは子どもたちの元へ帰ることができました。
また公園に行って、このボールでいっぱい遊ぼうね。
その時の子どもたちの笑顔は、ひときわ輝いて見えることでしょう。
港湾局のみなさん、本当にありがとうございました。

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