園長メッセージ


子育こそだてはみんなでってたかってするもの

 COSMOS保育園のWebページにおしくださりありがとうございます。園長えんちょうのハラです。この園長メッセージでは、わたしの保育にたいするかんがかたを、多少なりともお知らせできたらと思います。

 保育についておはなしするまえに、「子育こそだて」について考えてみたいと思います。「親と子」といった関係性かんけいせいの中で「子育て」がよくかたられていますが、動物社会学どうぶつしゃかいがくにおいても、文化人類学ぶんかじんるいがくにおいても、そもそもヒトというしゅ共同体きょうどうたい(れ・集団しゅうだん)で行動こうどうすることが基本形きほんけいです。よって本来ほんらいの子育ては、子育て集団がってたかってするもの、そしてその人間にんげん関係の中で子どもが発達はったつ成長せいちょうするものなのです。現代げんだいに見られる核家族かくかぞくの、閉塞へいそくした家庭の中での「子育て」は、親子にとって非常ひじょうつよ負荷ふかのかかる異形いぎょう形態けいたいであると言えます。

 こうした子育てについての考え方をもとに、子どもへの「保育」はどのようなものになるか考えてみます。子どもに対する公的こうてきな子育てサービスには、幼児教育ようじきょういく乳幼児保育にゅうようじほいくという2つのとらえ方があります。前者ぜんしゃおも幼稚園ようちえんになってきた「教育」で、後者こうしゃ保育所ほいくしょ(保育園)が担ってきた「養護ようご」です。わたしたちは保育所なので、「養護」をとても重視じゅうししています。わたしの考える養護とは、“「せいめい維持いじ中心ちゅうしんとした子どものかつどう」(=生活せいかつ)と「発達全般はったつぜんぱん」の保障ほしょう”をします。そのため、幼保一元化ようほいちげんか(幼稚園と保育所を統合とうごうしよう、という政策せいさく)がさけばれる中であっても、子どもへの教育と言うよりはむしろ、子どもへの養護に注目して共同生活を送ります。「保育」の前提ぜんていは「養護」をどのように実施じっしするか、によってまるのです。そして、ヒト社会本来の子育ては「養護」を目的としていたわけですから、保育所は人々ひとびと日常的にちじょうてきいとなみに根差ねざした機関きかんであると言えます。そのことから、親子だけの世界せかいふさがれてしまわないように、子育て共同体として保護者の子育てを支援しえんすることが保育所の役割やくわりです。

 では、どのように「保育」を実践じっせんするのでしょうか。わたしが何よりも重視していることは、子どもの基本的人権きほんてきじんけんをいかに保障するか、ということです。と言うのも、さきほどしめした「養護」とは、生存権せいぞんけん幸福追求権こうふくついきゅうけんといった、子どもの基本的人権の保障にほかならないからです。より具体的ぐたいてきに言えば、児童憲章じどうけんしょうに示された3つの基本綱領きほんこうりょうと12の条文じょうぶん達成たっせいできるようにくすということになります。

児童は、人としてとうとばれる。
児童は、社会の一員としておもんぜられる。
児童は、よい環境かんきょうの中で育てられる。

児童憲章:文部科学省もんぶかがくしょう

 大事だいじなことは、これらの主体しゅたい主語しゅごすべて児童、子どもだということです。そして、受動態じゅどうたいとしてかれているとおり、「子どもが条件じょうけんなしに一方的いっぽうてき享受きょうじゅできる」ことを示しています(基本的人権の原則げんそく天賦人権説てんぷじんけんせつ=人権は、人の意志いし政治せいじによっていかなる条件じょうけん付与ふよされず、また制限せいげんされたりうばわれたりしないものだということ) なぜなら、「児童虐待ぎゃくたい」「児童労働ろうどう」「児童福祉ふくし」という言葉ことば意味いみっているように、野蛮やばんな社会において児童はさきに生命や尊厳そんげん、生活や人権が奪われる対象たいしょうだからです。つまり、保育者にかぎらず、わたしたち大人おとなすべて、子どもとともって生活していけるように、子育てや保育をつうじて子どもの基本的人権を保障するために行動こうどうすることが、現代に生きるわたしたちの使命しめいと言えるのです。

 現在においても子どもの貧困率ひんこんりつが7人に1人の割合わりあいとなっているように、わたしたちは子どもが生きにくい、子育てがしにくい荒野こうやの中に生きています。わたしたちは荒野をたがやして、かれた種を大切に育てるもり番人ばんにんなのです。子どもという苗木なえぎを、共に大切に大切に育てていきましょう!

COSMOS保育園
園長 はら 栄理えいり(2023年〜)

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