春が来た!


入園・進級しんきゅうおめでとうございます。園長のはら栄理えいりです。COSMOS保育園の2023年度がスタートします。どうぞよろしくお願いいたします。

2023年度は、COSMOS保育園始まって以来いらいの園長交代という、大きな体制たいせい変化へんかの中でのスタートとなります。園長名に見慣みなれない名前が記載(きさい)されていますよね。わたしも見慣れないです。でも、今年度をみなさんと一緒(いっしょ)に歩んでいく中で、“園長 原栄理”という呼び名が見慣れたものとなれば良いなと思います。

さて、COSMOS保育園にかかわる人々の中で見慣れたものとなってほしいものと言えば、保育園の(えん)()(理念りねん)です。『人を愛し、ものを愛し、自然を愛し、普遍(ふへん)を愛します。』という言葉は、分かるようでよく分からないものだと思います。そこで、愛する4対象たいしょうのうちから一つ、今回は特によく分からない『普遍』についてわたしの考えをお伝えします。

『普遍』とは、「時代や場所が移ろいでも、身の回りのあちこちにありふれているもの」と言えます。ここで注意していただきたいのは、普遍とは不変ではない﹅﹅﹅﹅﹅﹅、ということです。例えば、『日本の文化の中の春』とは、さくらみだれ、うぐいすが大合唱がっしょうをし、卒業・入学でき返るなど、日本の文化の中にいる人々なら(みな)が簡単に想像できるものだと思います。しかし、「あなたが思いかべる春って具体的ぐたいてきにどんなもの?」と()かれた時には、十人十色(じゅうにんといろ)の答えが返ってくるでしょう。「春はあけぼの」と(しる)された平安へいあん時代と、温暖化おんだんかの進む現代では春の様相(ようそう)はずいぶんとことなります。現代でも、横浜では開花の便たよりが送られてくる三月後半において、沖縄おきなわではすっかり青々とした葉をしげらす桜に対して北海道ほっかいどうは雪の中です。その一方で、『春』が皆でゆるく共有できるイメージであることには変わりありません。これがもし「不変」であったなら、多様性が認められない『ただ一つの春』しか存在できませんし、(だれ)も「不変の春」を定義ていぎすることはできません。ややもすれば、定義を強制きょうせいするあまりに差別さべつ迫害はくがいがもたらされてきたことは歴史れきし証明しょうめいしています。普遍への理解と探求は、人と人とが関わりの中での多様性を支える土台なのです。

では、その多様性をもたらしているものとは何でしょうか。普段の生活の中では、ついつい「今・ここ・正しい・間違(まちが)っている」といった限定的な視野に(とら)われてしまいますが、わたしたちは実のところ先にお話ししたような多様性の共有によって、時間と空間を()えた優しい浮遊感(ふゆうかん)の中で生きています。それは、いにしえの時代から現在にいたるまで、時に「ほとけ慈悲じひ」であったり、「神の愛」であったり、そんな言葉で語られていた超越的ちょうえつてき存在そんざいからの優しく温かい抱擁ほうよう・まなざしでしょう。そうした過去から未来へ、ここからどこかへと()()ける大きな慈愛(じあい)信頼(しんらい)して身を(あず)けること、それが「普遍を愛する」ことだと思います。

長々とお話しましたが、COSMOS保育園にかかわる人は誰でも、「春が来た!」と、この時期特有とくゆうの不安と期待の入り混じる雰囲気(ふんいき)に心を(おど)らせて、保育園のある生活の中で「普遍を愛する」ことを楽しんでいただけたら(うれ)しいです!

(2023年4月園だより巻頭言かんとうげんより、再掲にあたり加筆かひつ修正しました。)


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